'南波くん、またねー' 'おーう' 'じゃあな春樹ー' 'うーす'

放課後のチャイムが鳴り響き、各々が解放感に胸を踊らせ足早に教室を抜けていく。そんなクラスメイト達との挨拶を済ませながら、俺は依然として漫然と帰り支度を進めていた。とんでもなくスローペース、それでいてとんでもなく雑なカバンへの収納に我ながら苦笑し、それからため息をこぼした。

'はあ……'

いつもだったら部活か友達とどこか遊びに行くかの二択だけど、あいにく今日の天気は雨。インドア趣味に乏しい俺にとってはこれから始まる自由時間は退屈そのものなわけである。となれば帰り支度する時間なんて惜しくもなんともないわけだ。

'体育が屋内になっただけでもダメージでかいってのに……' '春樹くん'

そんなぐうたら支度と独り言もいよいよ片付き、既に閑散としていた教室から出ようと席を立ったとき、狙いすましたかのようなタイミングで誰かが声を掛けてきた。

'おう、秋仁。まだ残ってたのか'

こいつの名前は北条秋仁。少し気が弱くナヨっちい見た目をしてるけど、同じサッカー部の一員で、意外にもプレーはそこそこ上手い。

'てか秋仁、お前また前髪が幽霊みたくなってるぞ。そろそろバッサリ切っちゃえよ'

伸びた前髪が左目を隠し、まるで鬼太郎みたいな不気味さを醸し出している。雨でジメジメしてるのもあって鬱陶しさに拍車がかかっている。

'お前のセンスは知らないけど、その見た目じゃ部員と打ち解けるのにまだしばらくかかるぞまったく'

俺たちは現在高校1年生。しかし時期はもう初夏を迎えようかといったあたり。サッカー部に入部していまだメンバーに馴染みきれていないのは、このころになるともう秋仁くらいしかいない。 俺に関しては中学生のときからの付き合いもあって秋仁とは気の置けない関係でいる。でも俺以外のやつとも仲良くできるよう少しは頑張ってみてほしい。

'あはは……でもみんないい人だから僕でもそのうち馴染めるよ' 'たくっ'

まあ部員の内面的な事情はともかく、こいつの実力自体は部でちゃんと評価されてるみたいだから、いかにもいじめられっ子の典型みたいな雰囲気のこいつでもそういった問題は起きていない。 ちなみに自分で言うのもなんだが、俺のほうが多分上手い。俺はサッカー部期待のホープなのだ。自分で言うのもなんだが……負けないように頑張らないといけないな。 と、ひとり勝手にライバル心を燃やしながらも、とりあえず秋仁が訪ねてきた用件を聞くことにする。


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