がんの分子基盤解明への貢献:花房秀三郎氏を偲ぶ
///'がんの分子基盤は、20 世紀末までの 40 年間に行われた研究で明らかになった部分が大きく、がんの診断と治療はそれによって大きく変容した。この時代の貢献者として数々の業績を残し、多大な影響を及ぼした花房秀三郎氏が、3 月 15 日、79 歳で逝去した。1960 年代から 70 年代初頭にかけて花房の行った RNA///'腫瘍ウイルス///'の研究によって、これらのレトロウイルスがもつがんの原因遺伝子(現在では///'がん遺伝子(oncogene)///'とよばれる)とよく似た遺伝子が、動物やヒトの正常な細胞に存在していることが明らかになった。その後、80 年代から 90 年代にかけて花房らが行ったレトロウイルスのがん遺伝子に関する研究は、正常時には細胞内シグナル伝達を調節している細胞性の遺伝子が、がん細胞では異常な働き方をする仕組みを解明する手がかりとなった。日本で生まれ育った花房は、大阪大学を卒業後、同大学微生物病研究所を経て、1961 年に渡米し、カリフォルニア大学バークレー校の Harry Rubin の研究室で研鑽を積んだ。当時、ウイルスによる正常細胞からがん細胞への形質転換を///'フォーカス測定法///'(フォーカスとはがん化した高密度のがん細胞コロニーのこと)を用いて定量的に調べる方法が、同大学の Howard Temin によって開発されたばかりだった。Rubin 研究室に在籍中に花房が発表した諸論文は、がんの原因を説明する///'がん遺伝子仮説///'の基礎を築いた。Peyton Rous がニワトリの肉腫からラウス肉腫ウイルス(RSV)を初めて発見したのは、1911 年のことである。Rubin と、同研究室のポスドク研究員だった Peter Vogt は、RSV の試料に別のウイルスが混在していることを見つけ、これをラウス関連ウイルス(RAV)と命名した。Rubin は花房に純粋な RSV の単離を試みるよう指示し、その作業のなかで花房は、RSV が///'不完全///'なウイルスであることを発見した。つまり、正常細胞をがん細胞に形質転換させる能力はもっていたが、自己複製に必要な遺伝要素が欠けていたのであった。花房と Rubin は、RSV に感染していながら感染性のウイルスを生じない形質転換細胞を単離した。RAV は、RSV の複製に必要なウイルス性遺伝子を供給する///'ヘルパー///'ウイルスだった。その見返りとして、がん化を起こす RSV は宿主細胞の増殖を促進し、ウイルス複製に必要な成分を生産させて RAV を助けていた。これによって、この 2 種のウイルスが一緒に増殖する理由が説明できた。形質転換能のない RAV は RSV なしでも複製できること、また、RSV は RAV なしでも細胞を形質転換させられることから、RSV には、ウイルス複製に不要だが細胞の形質転換や腫瘍増殖を起こす遺伝子が 1 個または複数あると考えられた。形質転換を起こす///
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